症例1

XX XX  44歳  男  飲食店経営
診断   脳梗塞
障害名  失語,右片麻痺

現病歴  4年制大学経済学部卒業,銀行に勤める予定であった。しかし,最初の研修でその仕事が自分に向かないと考え,すぐ退職した。その後,小料理店風の居酒屋を始め,20年余り続けてきた。1995年3月27日,かなり大負の酒を飲んだ。翌日,昼頃に起きたとき,うまく話せないことと右上下肢の脱力に気づいた。同日,某病院へ入院した。CT上,左大脳深部白質,中ー後大脳動脈境界域に低吸収域を認めた。発病後,意識障害はなかった。10日目から自力での食事摂取を始め,また車椅子に乗るようになった。 5月に入り杖で少し歩けるようになった。リハビリテーションを目的として, 5月23日に当院へ入院した。

入院時現症  身長165 cm,体重71 kg,血圧128/82 mmHg,安静時心拍数は86/分であった。神経学的には,失語と右不全片麻痺を認めた。言語機能では喚語困難,書字困難,および軽度の聴覚理解の低下を認めた(初期評価の項参照)。知的機能では言語性lQ86,動作性IQ 89, 全検査IQ 86, HDS-R 23であった。その他の高次脳機能には異常なかった。右不全片麻痺はプルンストローム・ステージ上肢4’手指5’下肢5’深部反射は冗進し,右側バビンスキー徴候 陽性,筋緊張はやや冗進していた。右肩関節に軽度のROM制限を認めた。

検査成績  血液生化学検査で高脂血症(コレステロール262 mg/dl,トリグリセライド446 mg/dl)を認めた。心電図,胸部X線では異常を詔めなかった。

初期評価  SLTAは60(間く80%,話す62%,読む77%,書く27%,計算加減60%,乗除30%),失語は非典型例で伝導失語からの回復型と考えられた。上肢機能はMFS右75,左100で あった。体幹下肢運動機能はMOA 56.5,杖歩行が可能で,10m最大歩行速度101.7m/分であった。ADL上では入院時BIは65, 2週後の評価時85で,入浴に一部介助を要し,また階段昇降が不可であったが,その他は自立していた。自転車エルゴメータによる運動負荷試験では88ワット負荷で目標心拍数を上回り,CR-fitness.の軽度低下が認められた。

問題点  高脂血症,CR-fitnessの軽度低下,失語が職業復帰に及ぼす影署。

治療計画とゴール設定  高脂血症に対しては,食事療法と運動による体重減少の効果をみた上で,薬物療法を行うこととした。RESによる回復予測では,入院後3か月までSLTAでみられる言語機能の改善,2か月まで上肢および体幹下肢機能の改善が見込まれた。言語訓練は発話, 文の理解,書字,数の訓練を行うこととした。言語機能は日常会話は可能になるが,接客業に支障が残る可能性があると考えられた。上肢機能は回復段階にあるので,麻痺側の機能訓練を中心 に行うこととした。また,体幹下肢機能は杖なし歩行の獲得,持久性の向上を目標とした。全般的には,入院時Blから日常生活上は特に問題は考えられなかった。職業復帰に関しては,家人の助けを借りた上で,居酒屋の経営を続けることが可能となることを目標とした。

経過  入院後1か月半で体重は71 kgから66 kgに減旦したが,高脂血症は十分には改善せず,薬物療法を開始した。言語機能は発語,理解とも順調に改善した。右上肢機能も順調に改善し,約2か月でプラトーに近づいた。歩行能力の改善が順調であったので,入院1か月後か らフィットネス向上を目的としてスポーツ訓練を開始した。また,退院前に約1か月間自動車運 転習熟訓練も行うことができた。

最終評価(12週)  SLTA 99と回復予測(77)以上の改善を諮め,接客業も段階的に可能になると考えられた。右上肢はMFS94と予測と等しく,実用手として簡単な料理を作れるレベル になった。MOAは72と予測(72)通りに改善し,10m最大歩行速度17].4m/分, 3分間歩行距離262 mとなり,速度・持久性とも向上した。

帰結  発症から5.1か月,入院から3.3か月で自宅へ退院した。職業復帰(居酒屋経営) を徐々に行う予定である。

小括  RESによる予測通り,あるいは少しそれを上回る機能改善の得られた症例である。上肢機能と体幹下肢機能の改善は約2か月でプラトーに達したが,言語機能は3か月の訓練 によって改善した。自動車運転訓練のために入院期間が長くなったが,発症前の仕事に復帰するためには自動車運転は不可欠であった。

投稿日:1999年3月31日 更新日:

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