1 はじめに

脳卒中患者の身体運動の能力低下は医学的リハピリテーションの主要な標的のひとつである。 1996年,わが国の厚生省身体障害者調査によれば,18歳以上の身体障害者は290万人強であり、 原因別では脳血管疾患が12%で第1位となっている。

脳卒中のリハビリテーションにとって,機能的状態の回復を発症後早期に,正確に予測することは実践的に重要である。この予測は患者と家族が近い将来のための的確な生活設計を行うのを支援し,ヘルスケア専門職が現実的なリハビリテーション・ゴールを設定するのに役立つ。脳卒中患者の機能的帰結の予測因子に関する諸研究は,Jongbloed (1986)が概説している。それによれば,脳卒中の既往,高齢,尿便失禁,視空間認知障害は機能的予後が不良とされる指標であり, 入院時の機能的指標のスコアは退院時の機能的状態と正相関を示している。しかし,Hewer(1987)が示唆したように,種々の介入や治療の方法の有効性を評価できるとすれば,我々は疾病の自然経過や機能的状態はどのようであるかを知っていなければならない。疾病の自然経過に関する情報は長い間,医学において治療法を評価するための基礎とされてきた。Jongbloed (1986) は,脳卒中後の機能予測に関する今後の研究は脳卒中後の複数の特定時期に機能を測定すべきであると主張している。Partridge et al. (1987)は,368例の脳卒中による不全片麻痺患者の回復を8週間にわたって観察,記録し,身体運動の能力低下からの回復は予測可能なパターンにした がい,個人の進歩を比較,検討することができるようなプロフィールを作成することも可能であろうと報告している。Reding et al. (1988)は,脳卒中リハピリテーション病棟に入院した95例の患者を対象にして,2週間隔でバーセルインデックスを調査し,生命表分析の利用を提案している。この分析は,患者が前もって定められたバーセルインデックス・ースコアの基準に達すると期 待される時期を予測する統計的な基盤を提供するものと主張されている。単一変量あるいは多変量による解析が脳卒中後の長期能力低下の予測因子を決定するのに用いられてきた。現在では, 機能的帰結の予測因子を得るのに多変量解析を利用するのが一般的となっている。脳卒中後6か 月でのバーセルインデックス(Wade et al, 1983), 6週における機能的自立度(Prescott et al. 1982)のような一部の尺度の予測スコアを得るための関数式も提案されている。

脳卒中リハビリテーション, とくに入院患者では,回復過程が治療法やリハビリテーションの環境に影響されるため,機能回復の自然経過そのものを記録することは不可能である。2か所の 別々の病院で機能的帰結を予測するのに,利用する変数は同じであっても,予測式はそれぞれに異なるだろう。むしろ,この種の予測式は患者のリハピリテーション・プログラム作成に実践的な利用価値があり,新たな介入法や治療法の評価にも役立つ。予測と帰結との不一致が明らかになれば,進行中のプログラムは変更されるだろう。その結果,全リハビリテーション経過の最適化が図られる。患者の機能的状態の予測は,ヘルスケア専門職に彼らのリハピリテーション技術を客観的に評価する手段を提供する。さらに,脳卒中患者の管理にとっては,科学的基盤に立って医学的リハピリテーションの効率やコスト・パフォーマンスを評価するのに重要な手段となる。 マイクロコンピュータを用いたデータベースは,病院や患者のデータを処理するための標準的な手段となりつつある。現在では, リハピリテーション管理を支援するコンビュータ技術は日常的なことになっている(Sulton et al. 1987)。

投稿日:1999年3月31日 更新日:

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