[3]脳卒中発症後の期間と最大歩行速度との関係をどのようにして双曲線関数に近似させるか(中村・他1991)

脳卒中患者のTSOとMWSとの関係を双曲線関数に近似させることは、異なる遇の2回の測定データがあれば可能ではあるが,MWSをより正確に予測するための式を得るには4回以上の測定データのあることが望ましい。実際には,CAGTプログラム開始後4週で5回のデータを得ることができる。これは帰結の予測に十分である。双曲線関数y=A-B/xへの近似は,TSOの逆数変換を行い,その後に直線回帰式を求めることで可能である(図5)。yはMWS(rn/min),ⅩはTSO(週)である。こうしてパラメータAとBを決定する。

神経学的な機能障害が軽度あるいは中等度であっても,長期にわたる臥床による廃用症候群のため,CAGT開始時のMWSはおそい患者が一部にいる。これらの患者では,CAGT開始後1-2過でMWSが急速に向上する。その後のMWSの回復はわずかである(図6)。このような患者の一部では,双曲線関数への近似は統計的に有意とならないことがある。

図7に,CAGTを開始してから4遇の時点までのデータから双曲線関数を得て,この式で予測した8遇および12過のMWSの予測値と実測値との関係を示す。CAGTを開始して8週あるいは12週でMWSが100m/min以上となった患者では,実測値と予測値との差はやや大きい。実際,12週における差は統計的にも有意に近い。しかし、MWSが100m/min以下の患者では,差は無視できる(表4)。われわれの調査研究(佐直・他1989)によれば。MWSが80m/min以上の脳卒中患者は日常生活における大部分の活動は自立し,高齢の両親や病気の家族の面倒も看ている。双曲線関数による予測は,CAGT開始後12週以内のMWS予測値が100m/min以下の場合に限定すべきであろう。

双曲線関数による近似が統計的に有意であれば,パラメータA,Bを用いて以下のことを予測することができる。図8では、A=80,B=321が代入されている。

Aは漸近線の値であり、将来において理論上は達成可能なMWSを表している。
A/2は達成可能なMWSの1/2であり,2B/AはMWSがA/2になる時期(TSO)である。A-√Bと√Bは,直線y=X+Cが双曲線y=A-B/xと接する点である。この時期には歩行速度の利得はおよそ1m/weekとなる。この時期以前には歩行速度の利得は1m/weekよりも大きく,以降には1m/weekよりも小さくなる。

統計的に有意な近似が得られた患者65名のデータを用い,年齢、身長,体重,感覚障害の有魚発症からの期間(TSO),CAGT開始時のMWS(IV),患側膝関節を900屈曲位から00まで伸展する時(角速度:30Q/sec)の最大トルク(A-IK)を独立変数として、パラメータA,Bの決定困を求めた。

A=0.973×A-IK+71.203(R2=0.40)
B=86.126×TSO+5.358×A-IK-291.552(R2=0.53)
2B/A=1.405×TSO-0.118×IV+4.33(R2=0.81)

さらに91名の患者データによる結果では、

2B/A=1.522×TSO-0.115×IV+3.003(R2=0.955)

が得られている。この式の解を求めることで、歩行能力の回復可能性を推定することができる。

図9は種々の数値をパラメータAとBに代入した場合の双曲線である。上図はA=80である。B値が大きくなるほど,MWSの回復は遅くなる。下図はB=321である。A値が大きいほど、達成可能なMWSは高く,回復過程は良好になる。

投稿日:2000年3月31日 更新日:

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