5.言語学習

言語の習得は、① 語章一 統語論的側面 ② 意味論的側面 ③ 語用論的側面 の3つの側面から考えられる。通常、健聴児にとっては、普通のコミュニケーションの環境にいれば、ごく自然に3つの側面が不可分に学習される。しかし難聴児の言語指導の歴史の中では、そのどれかに強く焦点があてられる傾向があった。旧来のformalな訓棟形式での指導は、ことばを知っていても、実際の場で適切に使えないという語用論的側面の問題がみられた。そこで、健聴児の言語習得方法と同じくコミュニケーションの場での学習の重要性が認識されるようになった。

さらに残存聴力を活用することによって、日常的なコミュニケーションの場でのことばの習得が容易になり、一層コミュニケーションの重要性がましてきている。しかし留意しなければならないのは、コミュニケーション場面では、意味内容の伝達に主眼がおかれるため、統語面の学習が不十分に陥りやすい。3つの側面がバランスよく学習されるよう配慮が必要である。

<スピーチの学習の手順>
 ① 受容と理解
 ② 模倣的使用
 ③ 誘導的使用
 ④ 自発的使用

ことばが自在に使えるというのは、話されたことばを瞬時に処理できるということである。難聴児の場合、スピーチは聴覚と視覚(読話)の2つの感覚を利用して処理される。そこでスピーチを処理するための聴覚経路と視覚経路を形成することが、なによりも重要になる。ともするとことばを話すことに主眼が置かれるが、難聴児では“受容と理解”が最も重要視されなければならない。スピーチの音像が十分形成されるよう繰り返しことばを聞く必要がある。また日常的な場面では、手掛りになることば(Key word)だけを聞き取り、了解していることもある。たとえば聞き取りにくい助詞を脱落させて、聞き取り易い内容語だけで類推し了解することがある。言語(Language)が完成していればそれでもよいが、言語習得途上ではそのような了解の仕方では、言語習得に影響がでてくる。言語習得途上にあっては、相手が話したことばの全体が受容されなければならない。

一般にどの国にもたくさんの子供のことば遊びがある。子供達はことば遊びを繰り返す中で、言語内容を広げ、習熟していく。たとえば、あやし言葉、おまじない、遊びの中の決まりきった文句、絵本、紙芝居、歌、劇遊び、かるた、しりとり、なぞなぞ、クロスワードパズルと、赤ちゃんから年長の幼児までいろいろある。難聴乳幼児を育てる時はこんなことば遊びをたくさん創り、こどもと一緒に楽しむとよい。幼い子供が喜びそうな活動に、定形的なことばをつけ、一定の遊びのフォーマットを創ったり、体験したことをもう一度繰り返す再現遊び、ごっこ遊びなどである。

子供の年齢、興味、関心に合わせ、いろいろな教材を工夫することで子供は楽しみながら言語を習得していく。

ことばを習得するためのもう一つの重要なことは、体験を通した学習ということである。ことに日常生活場面は、最も優れた体験の場であり、コミュニケーションの場でもある。難聴児はまずは自分が生まれた家庭の中で、生活する一員として家族の中に位置付けられる必要がある。人間の子供は、人間の生活の営みの中で、基本的な生き方を身につけ、文化や価値観を受け継ぎ、作り上げていく。一目の生活の流れや家事のプロセスが子供にも見えるよう、関わりあいながら共に行動することが必要である。行動を共にする中で、両親との一体感や共感、満足感を得、様々な作業能力を向上させ、行動の見通しを作り、それを繰り返す中で生活に必要なことばを学んでいく。3歳までの子供は、日常的な行動について驚くほどの観察力を有しているが、それを過ぎると見方が概括化し、雑になってくる。親の日常的行動に興味のある時期に、面倒がらずに生活の折々の体験を共有し、体験と言葉をっなげていくことが大切である。

『今日は昨日措いた絵を見せて、「おふろ あらおうか」というと、D児も「オウオ アラオー」と言って、姉と3人でお風呂場にいきました。D児と姉とお風呂を半分ずつ洗い、半分ずっシャワーで流してくれました。お湯がいっぱいになりそうな頃また風呂場にいきました。D児が「イッパイ」と言って止めてくれました。布団も3人で敷きました。

「Dちゃん、そっちひっぱって」と言うと、一生懸命引っ張ってくれ、3人で汗をかきながら敷きました。姉が首に汗をかいちゃったと言ったので、D児と一緒に触って、「べとべとだね-。あせだよ。Dちゃんのくびは」と言って触りあいました。』

これは母親の家庭記録であるが、このように子供のペースに合わせ、体験を共有することで子供と母親の共感が広がり、相互的な愛情や信頼感が形成されていく。そして子供は様々な実感と共に、ことばを意味あるものとして積極的に学習していくことができる。

投稿日:1997年3月1日 更新日:

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